子供のころ、家の裏の方に出れば田んぼがひろがっていた。
秋になると田んぼには稲架がたった。並べて立つ稲架もあれば、田の隅に沿って四角形に立つ稲架もあった。
その四角形に立てられた稲架のところが、私のトンボ釣り場だった。
3尺ほどの笹竹の先に3尺ほどの木綿糸を結び、その先端にメスのヤンマをつなぐ。それがヤンマ釣りの仕掛けで、釣るべきヤンマは稲架の内側に沿って飛んでくるので、オスのヤンマが近づいたところで、竿のヤンマを振りまわす。メスのヤンマが手に入らなかったときは、オスのヤンマの尻尾に赤い絵の具を塗ってメスに擬装した。
やってきたヤンマは竿のヤンマにガリガリとからみつき、地に落ちる。そいつを素早く手づかみにする。それが楽しいトンボ釣りだった。
いま思い出すと、稲架に沿って飛んでくるヤンマはいつも反時計まわりだったようだ。

(大崎紀夫)