50代から60代にかけてだったか、月2回の海釣りの連載をスポーツ紙で10年ほど続けたことがある。早いときは朝の3時ごろ、遅いときは5時ごろに船で沖に出、それぞれの季節の魚を釣るのである。
あるとき、伊豆の戸田岬からスルメ釣りに出た。夜釣りで、陸からそれほど遠くないところの浅場での釣りだったが、海面を照らす光に寄ってくるイカはよく釣れた。船頭は、釣りたてのイカを甲板でさばき、その場で刺身を作ってくれた。旨いものだった。
その釣りのとき、水面を流れてくる紐のようなものがいくつかあり、よく眺めると水母のようだった。試しに釣り竿でその紐を切るようにすると、すぐに切れた。ところが、少しするとまたつながっているのである。
変な水母だな、と思ってあとで調べると、個体がいっぱいつながる水母がいることが分かった。ただし、そんな水母に出合ったのは、そのとき1回だけである。

(大崎紀夫)